前世のお話 vol.2
ミルトン・エリクソンは、20世紀最大の天才的な催眠療法家で精神科医、心理学者です。
アメリカ臨床催眠学会の創始者でにあり、初代会長も勤めました。
そんなエリクソンの手法によるにエリクソン催眠を習いに行ったときのお話です。
インナーチャイルドを癒やす催眠や前世療法も学びました。
前世療法では、受講者がペアになって、催眠誘導を行う方と誘導に従って見たイメージを誘導者に話す側になります。
平たく言えば、催眠をかける方とかけられる方になるということです。
私がペアを組んだのは初対面でしたが、私より少し年上のとてもいい感じの女性でした。
その女性の誘導に従って、私は自分のひとつの前世に行き着きました。
そして、その生を終える少し前の時間にイメージの焦点を合わせます。
私が見た前世のその場面は戦争中で私はいち兵士でした。
土嚢を積み上げた広場のようなところで敵軍と機関銃で撃ち合っています。
隣には仲間の兵士が私と同じように敵に向かって銃を放っています。
そんな場面が私がこの生で命を失う直前の場面でした。
この後、まもなく私たちは敵の銃弾に倒れることになるのでしょう。
でも、そうとは知らず、私たちは敵に向かって機関銃の振動に身を震わせながら闘っています。
次の瞬間、隣にいた兵士が私の方を向きました。
そして、とてもとてもやさしい笑顔でこう言いました。
「あなたと一緒に闘えてうれしかった」と。
私たちが死を迎える直前の言葉でした。
この隣にいた兵士は、今世では、私にフリーライターになるきっかけを与えてくれた「いい話の新聞社」の社長でした。
今世で私たちふたりは、一緒に多くの人の取材に出かけました。
ほんとうにいいコンビであり、お世話になった導き手でもありました。
その社長と前世では死をともにする仲間の兵士だったとは驚きでした。
「あなたと一緒に闘えてうれしかった」という言葉を聞いた次の瞬間、私は目から涙をこぼしました。
誘導者の女性ももらい泣きをし、その後は涙声のまま、時々声を詰まらせながら誘導を続けてくれました。
ところで、前世ってほんとうにあるのでしょうか?
私にはそんなことはどうでもいいことでした。
単なる妄想であってもでっちあげのイメージであってもどうってことはありません。
私にとって前世がほんとうにあるかどうかより、この前世療法が私にもたらしてくれたものの方が重要なことだからです。
この前世療法の終了時には私はとてもすがすがしい気分で目覚めることができました。
そして、今でも前世で兵士だった社長がやさしい笑顔で「あなたと一緒に闘えてうれしかった」と言ってくれた場面を思い出し、胸を熱くすることがあります。
そして、「ありがとう、社長」と心の中でつぶやき、手を合わせたい気分になります。